マグロの超音波検査に必要なマグロの解剖及び生理
マグロの形状は写真1に示す様に方錐形且つ流線型を呈している。体表面には径3mm程度の鱗で覆われておりその下層は硬い皮で身を保護する。
背カミの一部と体側線に沿った鞘(胸びれを収納する鞘状のくぼみ)区域の表面の皮は軟骨化し、超音波単触子の密着が悪くなる。またキテコ等の介在もインピーダンスマッチングが悪く多重反射ノイズが出現し最も観察困難な領域である。この領域直下の深部に問題の焼けが高発する。超音波単触子を密着出来た場合は鱗径3mmに厚みはμm単位であるためか、5MHz帯域において超音波透過性の低下は問題にならないレベルであった。しかし鱗の配列の影響により頭尾方向に超音波ビームを傾ける必要性があった。
マグロの身の構造は対象重量40キロにおいてそうめん様に円柱状にのびる径1mm前後の筋繊維の集合が筋節厚み10mmを筋隔が包み込む構造で見られ同心円状に頭から尾にかけて均等平行に配列している。タンパク、水分、脂肪、鉄分等の成分組成は、人体の筋肉及び軟部組織の比率と差がないと言われている。よって人体の軟部組織観察と大差ない走査技術を応用出来ると予想される。また最も考慮しなければならない、生物学的知識としてマグロ類は哺乳類と同じく自己体温32度程度に維持しており血合い筋がもっとも熱調節に関与している。(文献マグロの科学参考)
さらにヤイトハタに摩酔をかけた状態にて心拍調律60前後であった。マグロ類も心拍値に差は無いと考えられる。よって心拍数が上がると血圧は上昇し体温は上昇すると考えられる(2005年2月11日水産試験場における実験結果、方法は超音波カラードップラー方による血流測定)
心拍の上昇する過程として釣り上げ時に逃げ狂う必死の運動量があげられ、それに付随して筋肉及び骨の運動エネルギーも熱の発生源になる。これは血合い筋のように調節されていなく運動に応じた熱発生につながると示唆する。(針金などを折り曲げを素早くおり曲げ動作を行うと熱を発生し火傷を起こすレベルまで熱が上がる現象にて理解できると思われる)
そのために強い焼けマグロにおけるツナ缶レベルまで身の熱変化を生じている。部位は背ナカ中心部の脊椎に接する。血液は黒くなり粉っぽくなる傾向があり身は局所的に焼けただれ酸味は弱く意外とうまみを感じる。
熱変化よりも酸身の強い、時に異臭を放つ焼けがある。どちらかというと血合い筋はただれ、血合い周囲身質の色合いは淡く不透明感があり軟化傾向を示す。また筋隔は剥離傾向を示し滲出液の貯留をきたしてくる。血は溶血傾向を示し異臭を放つことが多い。肉眼的に緑変傾向を示す(文献によるとスルフミオグロビン変化が関与しているとのこと)